虫に触れない人は自分を大切にするのが上手い2021/05/26

・夜、今に虫が出た。天井付近に止まっていたためなんの虫か明確には判断できなかったが、黒くて楕円でつるつるして薄い虫で思いついたのはゴキブリだけだった。

・私は虫と戦うことが苦手だ。トリッキーな動きをするもの全般が苦手で、飛行能力という予想外そのものの動きをする虫が得意なわけがない。

・また、虫=殺すみたいなイメージが自分についているからどうしても近寄りたくない。虫は苦手だ。しかし戦える。古い家で暮らす上での必須スキルだったからだ。

・親に助けを求めようものならそんな軟弱でどうするんだと怒られた。もしかして親は武士で俺は嫡子なのか?と思うくらい小言を言われる。

・じきになんとか自力で虫を処理できるようになった。でもこのスキルはうら若き乙女のスキルとしてはかなりレアな方で、家から一歩出ればかなり重宝されるものだった。(虫を殺せるように武士の心得を持ち合わせる教育をされた人間は令和の時代にはあまりいないのだ)そのため、学校やバイト先などで虫が出た場合はよくアサシンとして出動していた。だからずっと忘れていたのだ、自分が虫が苦手なことを。

 

・歯を磨きながら、天井近くの壁についたゴキブリを殺すのに最適な処理方法を検討していた。まあ無難にキンチョールかな〜と思いながら洗面所へ向かいうがいをしていると、フッと思い出したのだ、じぶんが虫苦手なことを。

 

・嫌だという感情を無視して害虫処理を行い続けた結果、こころの痛覚が麻痺して虫が苦手なことを忘れていた。そういえば苦手だった椎茸も無理して食べ続けたら平気になったし、人間負の感情を圧殺するのは案外簡単なのかもしれないと思った。

きっと、虫が触れない人は自分の「嫌だ」の感情を、怒られたくないとか波風立てたくないとかそういう社会的な向かい風から守り抜いて嫌いなままでい続けているんだろう。これはとてもすごいことだと思う。自分を大切にする習慣が身についているからこそ生み出された奇跡だ。

嫌いなことはやらない、みんなやりたくないからやってやるか…みたいな社会性より自分の嫌な感情を尊重したいから

嫌いなものは食べない、友達の誕生日を祝う席ででた料理だとしてもチーズだけは食わない、自分の嫌いな感情を尊重したいから

これはなかなか体力が必要だっただろうな、嫌いなものがある奴は偉いよ

 

・と思ってたら天井のゴキブリの処理が急に嫌になってやりたくなった。

・風呂から出てきた母に、リビングに虫がいるけど良く見えない、ゴキブリかな?と白々しく嘘を述べて、甘えるチャレンジをした。

・ゴキブリを見て母は一言、「これはゴキブリじゃないな。」

・するとその虫を左手で掴むと、右手で開けた網戸の向こうへポーンと投げ捨てた。

 

・自分の嫌を大切にして甘やかそうとしたら、無駄な殺生を避けることができた